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脳の活動で出た老廃物(アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβなど)の除去作業は、睡眠中に行われている可能性が高い/ジェフ・イリフ

ジェフ・イリフ氏が、脳の活動で出た老廃物(アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβなど)の除去作業は、睡眠中に行われている可能性が高いという研究結果を発表しています。

(所要時間:約12分)

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動画の内容 (全文書き起こし)
よく眠る事が大切なもう一つの理由/ジェフ・イリフ

睡眠 我々は人生の約1/3を 睡眠に費やしていますが 本当に睡眠とは何か分かっている人はいるのでしょうか

2千年前 古代 最も高名な 医学研究者の1人ガレノスは 我々が起きている時は 脳の原動力である液が 身体の方々に行き渡り 体の各部を活気づけ 脳を干上がらせてしまい 眠っている間に 体中のこの液が 脳に流れ込み 脳を潤し 新たな活力を与えるという説を提示しました 今 これは全く馬鹿げた話の様ですが ガレノスは ただ 睡眠に関して 何らかの説明を与えようとしていただけです

誰しも経験から分かっている事ですが 眠ると頭がすっきりし 眠らないと頭がぼんやりした感じがしますね 今や睡眠に関して分かっている事は ガレノスの時代よりずっと多いのですが まだ良く分っていない事は あらゆる活動の中で 睡眠だけが驚くべき脳の回復機能を持っている理由です

それで ある研究に関して お話ししたいと思います この疑問に新たな光を当てる事となるかもしれません 研究で分かったことは 睡眠は脳の ある最も基本的で 脳特有な 需要が高く融通が利かないという他の器官にないニーズを巧みに満たしているのかもしれないという事です

我々が観察する殆どの生物学は 問題とその対処策の一連だと思ってもいいでしょう 全ての器官が解決すべき最初の問題は 体中の細胞に栄養を供給し続ける事です 特に脳では それは生死に関わります 脳が電気活動に使うエネルギーは 体の全エネルギーの1/4を使いますが 質量は体重の2%しかありません

循環系は 血管を通して 栄養や酸素を体の隅々に送り 栄養配給の問題を解決します それをこのビデオで見れます これは生きたマウスの 脳内血管を映し出しています 血管は複雑なネットワークを作り 脳全体を埋めています 脳の表面から始まり 組織そのものに入り込み そこで広がり栄養や 酸素を脳の個々の細胞に供給します

個々の細胞が活動に 栄養が必要なように 全ての細胞はまた 副産物として老廃物を産出し その老廃物の排出が どの器官も持つ 2番目の基本的問題なのです これは人体のリンパ組織を示す図です 老廃物排除のために 進化した組織です 血管に次ぐ管の並列ネットワークが体中に広がっています タンパク質や他の老廃物を細胞間から集め 血液の中に入れ 排出する事が出来ますが

この図をよく見て頂くと 何か全く 納得いかないものが見えるでしょう この人体図の頭内を拡大すると 分かる事の1つは リンパ管が脳にはない という事です これは全くおかしな話ですね 脳の活動は非常に活発です と同時に大量に産出する老廃物を効率的に排出しなければなりません なのにリンパ管がないのです という事は 老廃物排除の仕方は 脳内では体とは異なるという事です

では どうやって脳はこの問題を解決するのでしょう? 一見何でもないこの疑問に 我々のグループが 最初 飛び込んだ時 脳内を覗いてみて分かった事は ニューロンと血管の間には 想像もしてなかった様な老廃物排除の解決法があったのです それがよく出来ていて その上 美しいのです 我々が発見した事をお話しします

脳はこの大きなプールがあり そこには無色透明の 脳脊髄液(CSF)という 液があります CSFは脳の回りを埋め 脳内からの老廃物は CSFに吸収され 他の排泄物と共に 血液中に排出されます その排泄方法は全く リンパ系そっくりですね でも面白い事に その液や老廃物は 脳内から来ていて むやみにCSFに 染み出す訳ではなく 特別な循環システムがあるのです それが組織化して このプロセスを行っています

このビデオでそれが見れます 生きたネズミの 脳内を映し出したものです 左のフレームに見えるのが 脳の表面で起きている事です 右のフレームで見えるのが 脳表面下の組織内で 起きていることです 脳表面下の組織内で 起きていることです 血管が赤くしてあり 脳を囲むCSFは 緑です

驚かされた事は 脳の外側にあるCSFは そこには 留まらないという事です 留まらずCSFは 血管の外壁沿いに脳中を流れ 血管の外壁から 脳内に流れ込みます これは脳細胞間から出る 老廃物を排出する 手助けの一過程です よく考えてみると この様な血管の外壁を 利用するということは 実に良く出来た解決法だと思います なぜなら脳はしっかりと 頭蓋で囲まれ ぎっしりと細胞がつまり 中には余分な空間はなく 血管に加えて 更にリンパ管組織の余裕がないのです しかし血管は 脳表面から 脳内の全ての細胞まで広がっていて 血管外壁沿いに流れる液は 血管外壁沿いに流れる液は 脳全体に容易にアクセスできるのです

これは実に巧みに出来ていて 脳内にある血管を機能変換させ リンパ管の様な機能にし それがリンパ系代わりの役割を果たしているので 脳機能にはリンパ系は必要ないのです 驚く事は 他のどの器官も この様な方法では老廃物は排除されていなく これは完全に脳特有の処理法だということです

最も驚く発見は お話しした全ては 脳を流れるこの液で 脳が眠っている時にだけ起きているという事です

左のビデオを見て下さい どれ程 CSFが 目覚めているマウスの脳内で 動いているかが分かります 殆ど動いていません この同じ動物が 眠ってしまうまで待つと CSFが 脳内を駆け巡るのが見えます 同時に分かった事は 脳が眠ると 脳細胞が縮み 脳細胞間の隙間が広がり CSFが流れ易くなり 老廃物を排出させます

それでガレノスの説は 全く的外れでは なかった様です 彼の言うように脳内を 液が駆け巡るのは 眠っている間なのですから

それから2千年後の今 我々の研究では 脳が起きている最も活発な時は 細胞間からの老廃物排除を後回しにし 睡眠中には 脳の働きは静まり 浄化体制に入り 脳細胞間のスペースから その日に蓄積された 老廃物を排除します 我々がする事と ちょっと似てますね 週日 仕事で忙しく家事を後回しにします 時間がないので今までの掃除をまとめて全部週末が来たらやるというようなものです

老廃物排除について随分話してきましたが あまり具体的ではなかった事は どんな老廃物を睡眠中に排除して健康でいられるのかということです

最近の研究で一番の焦点— 老廃物アミロイドベーターは 常に脳で作られているタンパク質です 今 私の脳も作っています あなたの脳もそうですが アルツハイマー病患者の脳では アミロイドベーターが 脳細胞間に蓄積します 排除されるべきなのですが アミロイドベーターの蓄積は 恐ろしい病気の鍵となる1段階だ と思われています それでアミロイドベーター除去速度を 目覚めている時と眠っている時の脳と比べて測り分かった事は アミロイドベーターの排除は 睡眠中の脳からの方がずっと速いという事です

では睡眠が 脳の老廃物排除の問題解決の1つだとしたなら これは今までの 睡眠とアミロイドベーターと アルツハイマー病との関係についての 考えを大きく変えるかもしれません 最近の一連の臨床試験は アルツハイマー病を発症していない患者の 睡眠の質と時間の劣化と 大量のアミロイドベーター蓄積量が 関係している事を示しています

しかし指摘すべき事があります これらの研究では 睡眠の量と質の劣化が アルツハイマー病の要因だとは検証されていません 確かな事は 脳の浄化作業— アミロイドベーターの様な老廃物排除がうまく行かないと アルツハイマー病の様な症状が起き出すようだということです

この新しい研究で分かった事は あなた方が睡眠に関して既に知っている事の1つ— ガレノスでさえ理解していた 「睡眠は脳を回復し浄化する」 これが睡眠に関する全てといっていい程 重要な部分だろうという事です

私もあなた達も眠りますね 毎晩 でも脳は休んではいません 体は動かなくても どこか夢の中を歩いている我々の脳 優雅なマシンは 静かに働いています 浄化作業をし この想像を絶する 複雑なマシンを維持しています 家事の様に 汚い感謝されない仕事ですが 重要です

あなたの家で台所を片付けなかったら それも一ヶ月間 全く住めない状態に 瞬く間になりますね でも脳内で清掃を怠ったその結果は 恥ずかしい汚い台所カウンターどころではありません なぜなら脳の浄化作業は 脳と体の健康と機能を大きく左右するからです だからこそ 脳の一番基礎的な浄化機能を理解する事が これからの脳疾患を予防し治療するには不可欠な事かもしれないのです

ありがとうございました

(拍手)

引用元:TED

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