@動画 > 科学・技術 > 「ひと晩寝てじっくり考えよ」が正しい理由/シャイ・マルク

「ひと晩寝てじっくり考えよ」が正しい理由/シャイ・マルク

シャイ・マルク氏が、夜にぐっすり眠ることの利点を解説しています。

(所要時間:約6分)

この動画を大きい画面で見る

動画の内容 (全文書き起こし)
「試験勉強」と「ピアノの練習」

もう午前4時です 大事な試験が8時間後に迫っています その後にはピアノの発表会があります 何日も勉強と練習を重ねてきましたが まだ準備ができているような気がしません どうしたらいいのでしょう?

もう1杯コーヒーを飲んで もう何時間か詰め込み勉強したり 練習することもできるでしょう でも 驚くなかれ 本を閉じて 音楽もやめて 寝る方がいいのです

睡眠は 私たちの 人生の3分の1を占めますが 私たちの多くは驚くほど睡眠を ほとんど気にもかけません このような無視は しばしば 大きな誤解からきています

睡眠は失われた時間ではないし 大事な仕事を終えたときの休憩というだけではありません そうではなく 睡眠は重要な役割を果たしており 睡眠中に身体は重要な機能のバランスをとって調整をし 呼吸機能を整え そして 循環から成長や免疫反応までを調整しているのです

すごいけど 試験が終わってから 考えればいいじゃないって? そう 焦らないで 睡眠は脳にとっても重要なのです

身体を循環する血液の5分の1が 眠りに落ちる時に脳に流れ込みます そして眠っている間に 脳の中では 記憶力の働きにとても重要な再構成が盛んに行われるのです

一見すると 物を覚える力は そんなにすごくないように思えます 19世紀の心理学者 ヘルマン・エビングハウスは「私たちは最初の20分の間に新しい記憶の40%を忘れてしまう」と証明しました この現象は忘却曲線として知られているものです

しかし この忘却は 記憶の固定によって防ぐことができます この過程によって 情報は 失われやすい短期記憶から 長持ちする長期記憶へと移ります

この記憶の固定は 海馬と呼ばれる脳の主要な部位によって行われます 海馬が長期記憶を形成することは 1950年代に ブレンダ・ミルナーによるH.M.という患者に対して行われた研究で示されました

この患者から海馬が取り除かれるとH.M.の短期記憶を形成する能力は落ちましたが 繰り返すことで 体を使った動きを覚えることはできました 海馬を取り除いたためにH.M.の長期記憶を形成する能力も落ちました

この実験からわかることは 海馬が長期的な陳述記憶の固定にとりわけ関連しているということです これは試験のために暗記する 事実や概念などの記憶です 対する 手続き記憶は 発表会のためにこなさねばならない ピアノの運指のようなものです

ミルナーの発見は 90年代の エリック・カンデルの研究に並んで 記憶の固定についての現在のモデルをもたらしたものです

知覚データは 最初に脳内信号に変換され 短期記憶として 一時的にニューロンに記憶されます そこから 海馬へと移り そして 皮質のニューロンが強化され 役割が高まるのです

神経可塑性という現象のおかげで 新しいシナプスの芽が作られ ニューロン同士が新しく結合し 神経ネットワークがより強固になり そこで情報が長期記憶となるわけです

ではなぜ 覚えていることと 覚えていないことがあるのでしょう?

記憶維持の範囲と効率に影響することがいくつかあります たとえば 興奮している時や ストレスを受けている時に形成された記憶は 海馬が感情と結びついているので よく記録されます

記憶の固定に寄与する 重要な要因のひとつは おわかりでしょう 良質な睡眠なのです

睡眠は4つの段階からなり もっとも深い睡眠は 徐波睡眠や 急速眼球運動として知られています これらの段階を 脳波測定器で測定すると 脳幹から海馬 視床そして皮質へと電気刺激が伝達することが観測され これらが記憶形成の中継局として働いているとわかりました 睡眠の異なる段階によって 異なる種類の記憶が固定されていることもわかりました

ノンレム徐波睡眠では陳述記憶は符号化されて 海馬の前方部にある場所に一時的に保管されます 皮質と海馬の間で行われるやりとりを通じて繰返し活性化されると 徐々に皮質にある長期記憶の保管場所に移されます

一方 レム睡眠は 目覚めた状態の脳の活動に似ているため 手続き記憶の固定と結びつけられています

研究によると 公式を覚えてから3時間後 また 音階を練習してから1時間後に眠るのが理想的です

これで いい加減に睡眠をとることが 長期的な健康を害するだけでなく 前の晩にした知識と練習で得たものを 自分の物にしにくくなるのだと分かってもらえたでしょうか

「ひと晩寝てじっくり考えよ」ということわざが 正しいということですね

寝ている間に脳内で起こる新しい結合の再構成と形成について考えてみれば きちんと睡眠をとることで 毎朝新しく改善された脳とともに目覚め 困難に立ち向かうことができると言えるかもしれません

引用元:YouTube

@動画 > 科学・技術 > 「ひと晩寝てじっくり考えよ」が正しい理由/シャイ・マルク

▲このページの先頭へ