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人間の脳と行動に影響を与えている腸内に住む微生物たち/エレイン・シャオ

エレイン・シャオさんが、腸内に住む微生物が脳に影響を与えるメカニズムを解説し、侵襲的な治療を全く行わずに自閉症やうつ病 そして多発性硬化症のような疾患を治療できる可能性のある「微生物ベースの治療法」研究を紹介しています。

(所要時間:約6分)

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動画の内容 (全文書き起こし)
エレイン・シャオ

この事を考える度に 驚きを感じるのですが 私達のひとりひとりの頭に 1.4キロ程もの細胞があり それらが文字通り 私達の全てを制御しています そして重要な事は 脳は体から独立して機能している訳では無く むしろ 脳は私達の器官系の要求や経験に反応しているということです

統計が示す驚くべき数字があります ご存知の方も おられるでしょうが 私達の体は 真核細胞だけなく その10倍以上もの微生物細胞により 構成されています これらの微生物は主にバクテリアで—その他ウイルスや原虫などがありますが— 私達の常在菌叢の一部となり共生微生物ゲノム群を構成しています

腸内のこうした微生物の数は100兆で その種類も1万種以上 遺伝子の数もヒトの150倍になります 人体内の微生物総量は 0.9〜2.7キロだという事まで推測されています これは平均的な成人の脳の重さの2倍にもなります

徐々に分かって来たことは 私達を形づくる共生微生物たちは 脳の正常な発達と機能において 基礎的な役割りを担うように共に進化してきたということです

そしてこれらの微生物を研究するには マウスを可能な限り 完全に無菌状態で育て 研究したい微生物を移植します こうした研究を通して 共生微生物が幾つもの複雑な行動を制御していることが分かってきました

例えば 不安 学習と記憶 食欲や満腹感など 様々な行動です ですから お気づきのようにこうした 微生物と脳の相互作用の研究から 非常に重要なこと—微生物が脳の健康や病気にどう関り 影響するかを学ぶことができるのです

不思議に思われるかもしれません 腸内に住む微生物がどうして脳に影響を与えるのかと これには様々なメカニズムがあります その1つは 迷走神経の活性化により起こるものです

迷走神経は腸管壁に接触し 脳幹にまでずっと伸びています この迷走神経への ラクトバチルス·ラムノサス と呼ばれるバクテリアの働きかけが マウスのうつ様状態に影響してきます うつ状態を測るタスクにおいて このバクテリアで治療を受けたマウスには うつ様症状があまり見られませんが 迷走神経に損傷があると この改善は見られません

バクテリアが脳に影響を与える もう一つのメカニズムは 免疫組織の活性化によるものです 身体の免疫細胞の約80%は 腸内に存在していて 免疫異常は 神経疾患を引き起こします

細菌バクテロイデス·フラジリスは 免疫組織を活性化してマウスの 多発性硬化症を防ぎます このバクテリアを移植されたマウスは グラフの赤線で示すように 多発性硬化症に対してより強い抵抗力があり これは 調節性T細胞と呼ばれる免疫細胞で マーカーCD25を発現する特別な一群の 活動に依存しています もしこの免疫細胞の活動を ブロックした場合 バクテリアの有益な影響までも妨害してしまいます

微生物が脳に影響を 与えるもう1つの方法は 腸内分泌組織を活性化して 内分泌細胞からの神経ペプチドと 神経伝達物質の生産を促すやり方です また腸内のバクテリア自体も 脳機能に影響を及ぼす代謝物を生成することができます

そして これは私たちが 微生物ベースの治療に関係すると考えている経路の1つなのですが ここカリフォルニア工科大学 パターソン&マズマニアン・ラボの私達が マウスの自閉症様の症状を 治療するために使ったものです

このバクテロイデス·フラジリスという細菌で マウスを治療することにより 私達は中核となる異常 ここに示されるコミュニケーション能力の異常等を修正出来るのです それは自閉症の特徴的な診断症状です

自閉症様の症状を呈するマウスは 青いバーで示されているように あまりコミュニケーションを取ることが出来ず バクテリアで治療すると 赤いバーで示されているように その症状を改善することが出来ます この発見の意味するところは大変に大きいと思います

侵襲的な治療を全く行わず 自閉症やうつ病 そして多発性硬化症のような疾患を治療出来るとすればどうでしょう? 微生物ベースの治療法は私たちに 継続的な治療を必要とせず 長期に渡り持続的効果を持つ 安定した微生物環境を構築する道を 提供するかもしれないのです

また 微生物の中には 操作や排除さえも比較的簡単にできるものがあり それらは標的に うまく働きかけ 機能を規則的にするため さらには物質伝達のためにも 容易に変化させる事が出来るのです

だからポイントとして 覚えて頂きたいのは 我々は主に微生物細胞で構成されているだけでなく これらの細胞の一部は本当にあなたの物の見方を変えてしまう程の働きをしていて 脳の発達や機能 さらには私たちの行動に影響を与えているということです

そしてまた いくつかの研究が示す 栄養と免疫から脳と行動に至るまでの 生物学的プロセスにおいて 共生微生物が果たす重要な役割りをふまえて 私達が 毎日やっている事を考えてみて下さい (笑)

殺菌のし過ぎなどで 微生物の役目を妨害している

殺菌のし過ぎなどで 微生物の役目を妨害している事が どう 私たちの健康に影響し 私たちが病気に罹り易くなっているかを

ありがとうございました

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引用元:YouTube

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