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機能的MRI(fMRI)を使って「生きている」人間の脳の活動を5000人分調べてわかったこと/リード・モンタギュー

リード・モンタギュー氏が、「機能的磁気共鳴画像法 (fMRI)」を用いた実験結果を元に、「二つの脳が同時に交流している時に何が起こっているか」についての新しい知見を紹介しています。

(所要時間:約14分)

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動画の内容
健康を害することなく 脳の活動を観察する

他人― 皆 他人に興味があります 誰もが周囲の人と関わり 様々な理由から 人間関係に興味を持っています

良好な関係 険悪な関係 面倒な関係 不可解な関係 そして今回は 人間関係の中で生じる 相互作用の中核に着目したいと思います 私は皆さんが他人との交流に 興味を持っていただけると思って話します

私は人間関係という 複雑な物を単純化し 単純化したものを 科学的な測定器として使用しました そして二つの脳が同時に交流している時 何が起こっているかについて まだ初期段階ですが 新しい知見を提供します

まずは どうやってそれができるのか 説明したいと思います

今では 健康を害することなく 脳の活動が観察できます 針や放射線は使用せず 医療目的なしに あなたの隣人や友人が 様々な認知活動をしている間の 脳の活動を記録できます

使用するのは “機能的磁気共鳴画像法”(fMRI)

皆さん聞き覚えがあるかもしれません 一言二言で説明して差し上げましょう

MRIは聞いたことがありますよね 磁場と電磁波を利用し 貴方の脳や膝 胃の写真を撮ります 白黒の時が停まった映像です 90年代 MRIを違う形で 使えることがわかりました 脳内の様々部分の 微妙な血流を 動画で見ることが出来るようになりました

だから何か? 脳内の神経活動は つまり脳を機能させる活動 脳のソフトウェアの動作は 血流と相関関係にあります 血流を見れば 脳の活動がわかります

これは認知科学にとって革命です 調べたい認知領域があるとします 記憶 運動 姑のことを考える 誰かに怒る感情的な反応 等々 これらの活動が脳内にどう分布するか 人々をfMRI装置にかけることで わかるのです

fMRIは初期段階で 精度が荒いですが 20年前には何もなかったのです 人を ―健康な人を― 研究できなかったのです fMRIにより 文字通り革命が起き 新たな実験材料を得ました

神経学者は研究で 色々な実験材料を使用します ミミズ ラット ハエ 等々 そして新たな実験材料が 人間です 今では人間の脳の機能を 調べるために 人間を使用でき いくつかの 生物学的な指標ができつつあります

さて ここで人々が行ってきた 実験の例を紹介しましょう これは“評価”の分野で行われました “評価”とは皆さんが考えている通りで もし2つの会社を比べた場合 どちらの価値が高いか知りたくなります “評価”の特徴は千年も昔から知られています

オレンジとフロントガラスを比べるには どうしますか?できませんよね? これらはお互いに混ざり合いません この場合 それらを同じ尺度に変換し その尺度を使用して評価をします こういう処理をするのが 脳の仕事です そして我々は評価に携わる脳の器官を 明らかにしつつあります

その一つが 神経伝達物質系です

脳幹に位置する細胞によって ドーパミンという化学物質が 脳全体に放出されます 詳しくは説明しませんが これは重要な発見であり 神経伝達物質系は小さいが重要です これらの神経細胞が パーキンソン病やドラッグの使用で 損なわれたり支配されます

そしてこれは非常に納得できます ドラッグを使用すると 評価の基準が変化し ドラッグが何よりも大事なものになります しかし 神経伝達物質系の真の特徴は 抽象的な概念の評価にも関係していることです

私たちは様々な理由から これらのような物に価値をつけます 私達の脳のスーパーパワーがあり それにはドーパミンが関係しています 人間だけが概念のために ―それが些細なものでも― 生存本能までも 否定できてしまいます

1997年 カルト宗教の集団自殺がありました ヘール・ボップ彗星の尾に隠れている 宇宙船が魂を別世界に連れて行ってくれるという考えに憑りつかれてのことでした 悲劇的な出来事です 彼らの3分の2は 大学を出ていました

しかし ここでの重要な点は 生存のために発達した神経伝達物質系を使い 生存本能が否定されたことです

これにはかなりのコントロールが必要です この話で一つ抜けているのは ここからの主題である 他人についての話です

人間関係の 評価にも 先ほどと同じような 評価システム―神経伝達物質系― が使われています このドーパミンシステムは 人をドラッグに溺れさせ パーキンソン病患者を静止させ 様々な精神異常の原因となり そして 人間関係を評価するのに使われるのです

誰かと交流している時の ジェスチャーに評価を付けるのです

例を挙げたいと思います 皆さんは知らず知らずのうちに この分野で かなりの処理能力を発揮しています

好奇心とちょっとした驚きの表情を見せる赤ちゃん

ここに赤ちゃんがいます 彼女は生後3ヶ月 オムツをして 微分積分はできません 私の親族で ここに映っていることを 喜んでいる誰かがいます 彼女の片方の目を隠してみてください 片方の目には好奇心が見え 逆の目には ちょっとした驚きが見えると思います

楽しそうなカップルの写真

カップルの写真 楽しい時間を共有してます そして実験により写真の一部を切り抜いても 楽しい時間を共有していることが読み取れることが分かりました 写真の色々な情報がヒントをくれますが 顔の表情から 最も簡単に読み取れます

しかし 普段の表情との違いは微妙です

別のカップルの写真

別のカップル 彼は私達に対し感情を映し出していて 彼女が映し出してる感情は明らかです 彼への愛と称賛

姉と弟の写真

そして また別のカップル(笑)

左側には 愛と称賛は 見られないようです(笑) 実際には 姉と弟です そして弟は多分 “仲良しなのはカメラの前だけで この後 僕のアメを取り上げて顔にパンチするんだろ”と言っています (笑) 写真を見せたことには後で酷く怒るでしょう

さて これらからわかることは 私たちは 評価にかなりの処理能力を使うということです それには脳の深部にある ドーパミン系 私たちが生きるためにセックスや食べ物を求めさせるシステムが関与しています そして それが私たちの行動の原動力となります

ではどのように実験を組み立てれば このドーパミン系を 人間関係の測定器として使用できるのか?

答えはゲームをさせることです 経済ゲームをさせます 二つの分野に進出し 一つは実験経済学 もう一つは行動経済学 彼らのゲームを拝借して 研究に利用しています

ゲームは“最後通牒ゲーム” と言います 赤は100ドル与えられ 青とどのように分割するか提案できます 赤の提案が 赤:70 青:30 だとしましょう そして主導権は青に移り 青が“”承諾”と言えば 二人はお金を受け取ります 青が“”拒否”と言うと 両者は何も受け取れません

経済学者がいう合理的な選択によると “ゼロ”以外は全て承諾すべきです でも実際 80-20の提案で 選択は中立になります 80-20では 相手が “”受諾”するかは五分五分 なぜか? 分かりますよね?怒るからです 明らかに不公平な提案に 怒っているからです

この手の実験は 世界中で行われています これはこの手のゲームが どのような測定器になれるかの一例です また面白いことに これらのゲームには 多くの認知能力が求められます

まず 相手に関する 適切なモデルが必要です 自分のしたことを記憶し 実行に移すためには少し勇気が必要です そして相手の反応を受け モデルを更新し 興味を引くことをしなければいけない これは非常に深い思考が必要です

まずは 相手が期待していることを判断し 相手の中にある自分のイメージを管理するためにシグナルを送ります 就職面接に似ていますね 先入観を持った 面接官の前に座り その先入観が 自分が望むイメージに修正されるようシグナルを送る

皆こういったことが上手すぎて 自分達では気づきませんが 私たちの測定器を使うことで 気づくことが出来るのです

この研究で 人は社交的な場ではカナリアだと気づきました

カナリアは炭鉱では感知器として使用されました メタンが増加したり 二酸化炭素が増加したり 酸素が減少すると この鳥は人よりも早く気絶し 警報システムとして働きます “”このままだとやばい 炭鉱から出るんだ”と

人々はテーブルに座り 数字をやり取りするだけの 単純で手順が決まった交流をするだけで そこに多大な神経を使います 私たちはそれを利用できることに気づき 実際に実験をしてきました

何千人 きっと5~6,000人に 実験したと思います でも データを生物学的な測定とするには もっとたくさんの数が必要です かなりの数が必要です しかし 何はともあれ パターンは見えてきていて そのパターンを数学的モデルに変換し そこから 人の交流に関する新しい知見が得られてきました

だから 何か? つまり これは有効な行動の測定方法だということです ゲームは私たちに最適な手段について教えてくれます それをゲームの間 計算し 行動をモデルとして形作ることが出来ます

6,7年前 我々はチームを作りました 最初はテキサスのヒューストンに 今はヴァージニアとロンドンにあります そしてfMRI装置を インターネットでつなげるソフトを開発しました 当時は6台接続出来ましたが まず 2台に着目しましょう

つまり 世界中の機械が接続できるので 接続したうえで中の人を交流させ 交流する二人の脳を同時に見ることが出来ます

初めて 個々の平均や コンピューターを相手にした人を調べ そこから推論を導くのではなく 二人一組で調べられるようになりました

人が他人と交流する様を より多くの 被験者で調べ 認知能力に関する 新しい知見が得られ始めています

もっと重要な実験として 精神疾患や脳障害を持つ患者に先ほどのような交流をさせて 交流に必要な能力とは何かを測定できます

実験は始まったばかりですが 初期段階の発見がいくつか出てきました 私たちはこの研究の将来に期待しています この研究で精神疾患に関して 従来とは違う 数学的な新しい定義を打ち立てられると思います これらの疾患の特性を 人々をカナリアとして使い 調べるのです

すなわち うつ病 自閉症 注意欠陥多動性障害の患者と健常者が行うゲームを分析します 健常者を感知器として利用し プログラムを使い 患者のモデリングを行うことで 精神疾患の評価が出来ます

まだ始めたばかりですが 世界中に施設を開設しています 中心地の一つは皮肉にも バージニアの小さな町 ロアノークにあります もう一つのハブがロンドンにあり 残りも開設中です いつかはデータを世界中に公開したいのですが それには複雑な問題があります

しかし 私たちの研究は 私たち人間を興味深い存在にしている理由のほんの一部しか見ていません ですので 興味があれば研究に参加して頂きたい ソフトウェアとその使用方法は喜んで教えます

最後に 認知能力を研究する上で興味深いのは 我々は常に限定されていたことです 最近まで 交流する人の脳を同時に見る術はありませんでした しかし 実際 私たち人間は 一人の時でも社会的な生き物です 私たちの脳は 他人と関わりない世界で発達した孤独な存在ではありません 実際 私たちの脳は他人に依存します 脳は他人に依存し 他人の中でこそ自己が表現されます

他人との交流があるまでは それが味方であれ 敵対する人であれ 自分にとってよくわからない人であれ 自分が何者かは分からないものです この洞察に基づき それを道具として使い 人間とは何かを明らかにし 精神疾患を解明するこの研究はその最初の一歩です

ありがとうございました (拍手)

引用元:TED

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