人前であがってしまう理由(と、それを克服する方法)/ミカエル・チョウ
人前であがってしまう理由を脳科学的な角度から解説し、その対処法を教えてくれています。
(所要時間:約5分)
動画の内容 (全文書き起こし)
手のひらが汗ばみ、鼓動がはやり、胃が締めつけられる。助けを求めることはできません。息ができないくらい のどが苦しいだけでなく、そんなことをしたら恥ずかしいのですから。いいえ 怪物に狙われているわけではありません。人前で話しているのです。
死んだ方がましだと思う人もいるかもしれませんね。死んでしまえば、何も感じることはありませんが、演壇の上ではあがってしまうのですから。
でも、誰もが人生のどこかで、人前で話さなければならないので、克服しなければなりません。まず、「人前であがる」ということがどういうことかを理解しましょう。
人は社会的な動物で、人からの評価が気になるものです。人前で話すことで評価が左右されるかもしれません。話し始める前にこう思うでしょう。「最低で馬鹿だと思われたらどうしよう?」
「馬鹿だと思われたくない」というこの恐れは、コントロールしにくい「脳の原始的な部分」による脅迫反応です。闘争・逃走反応という自己防衛は様々な動物に見られますが、ほとんどの動物はスピーチをすることはありません。
緊張してしまうことに関する研究において、賢いパートナーがいます。チャールズ・ダーウィンは、ロンドン動物園のヘビの展示の前で 闘争・逃走反応の実験をしました。
彼の日誌には、「かつて経験したことのない危険を想像すると、私の意思や理性の力は無力であった」とあります。彼は自分の反応が現代の文明の微妙な差異に左右されない、太古からある反応であったと結論付けました。
意識のある現代の我々にとっては、スピーチがヘビにあたります。脳の他の部位はジャングルの掟にのっとって作られており、スピーチでの「へま」という「ありそうな結末」を認識するとき、命からがら逃げだすか、死を覚悟で戦うべき時なのです。
すべての脊椎動物に共通の視床下部は下垂体がACTHというホルモンを分泌するよう促し、副腎から血中にアドレナリンを放出させます。首と背中が硬直して前かがみになります。筋肉が攻撃に備えるにつれて手足が震えます。汗をかき、血圧が急上昇、筋肉や臓器へと栄養分や酸素が十分運ばれるよう、消化活動が止まって口が渇きドキドキします。瞳孔は大きく開き、近くでメモのようなものを読むのが難しくなる代わりに遠くが見やすくなります。人前であがるというのは、こういうことなのです。
では どうすればいいでしょう?
まず、見方を変えること。これは頭の中の反応ではなく、自然なホルモンによる身体反応であり、自律神経系の自動制御によるものです。社会的不安には、遺伝も大いに関係があります。
ジョン・レノンは何千回もコンサートで演奏しました。その度に、彼は緊張で吐いていたそうです。人前で何かすることを、他の人よりも恐がる人はいるものなのです。人前であがることは自然で避けられないことなので、コントロールできることに集中しましょう。
たくさん練習をすることです。ずっと前から、本番に似た環境で行いましょう。何でも練習をすることで慣れ、不安な気持ちが和らぎます。だから、いざ人前で話すときには、自分に自信を持って目の前のやるべきことをこなせるのです。
スティーヴ・ジョブズは、雄弁なスピーチを何週間も前から何百時間も練習しました。自分が言っているかが良く分かっていれば、聴衆のエネルギーを取り込めます。そうすれば、肉食動物の昼食になってしまうという「視床下部からの信号」も恐くありません。
でも、脊椎動物の視床下部は、あなたよりも何百万年も長い経験を積んでいるので要注意。舞台に上がる前こそ、ずるい手を使ってでも脳をだまさなければなりません。腕を広げて深呼吸をしましょう。これによって視床下部がリラックスするよう促します。
緊張はたいていプレゼンテーションの直前に高まるものですから、直前にストレッチをして深呼吸をしましょう。マイクへ近づくときには声ははっきりと、体はリラックスしているはずです。きちんと準備したスピーチで、あなたがカリスマ的な天才だと、荒っぽい聴衆を説得してしまいましょう。
でも どうして?
人前であがることを克服したのではなく、慣れたのです。それに実際のところ、どれほどすましていても、脳の中ではあなたもまだ野生動物なのです。物事を深く考えられ、スピーチもうまい野生動物なのです。
引用元:YouTube