フクシマ事故の過去を振り返るだけでなく、2012年1年間に起こるだろうことをお話します/アーニー・ガンダーセン(Arnie Gundersen)
福島第一原発事故の直後にアメリカのTV番組で「メルトダウンが起きている」と指摘した原子力技術者:アーニー・ガンダーセンさんが、今後の見通しについて、1)福島原発の状況、2)住民の被曝、3)放射性ガレキ、の3つのテーマにそって解説されています。
(この動画は、2012年1月1日にYouTubeにUPされたものです)
(所要時間:約21分)
動画の内容 (日本語字幕の書き起こし)
アーニー・ガンダーセンです。2011年の終わりに当り、フクシマ事故の過去を振り返るだけでなく、2012年1年間に起るだろうことをお話します。
今回は、今後の見通しについて。三つの話題、
1)福島原発の状況、
2)住民の被曝、
3)放射性ガレキ
について話します。
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1)福島原発の状況
12/16、野田総理は、
「福島原発は冷温停止状態になった。収束したと考えられる」と表明した。IAEAも、
「冷温停止し安定状態になったことを喜ばしく思う。日本の関係省庁を通して公式な情報筋から最新情報を得ている」と言っている。米国政府は、
「我々政府はこのニュースをうれしく思う。日本政府は復興に向かい正しい選択をした」と述べている。ジョージ・ブッシュの「イラク戦争の任務は達成された!」という空母での演説に似ている。
全くのウソで福島は長期戦であり、収束には程遠い状態だ。福島原発は安定状態にない。
横にしたカップのてっぺんにあるのが動的平衡状態。転がり落ちる可能性がある。カップ内の底にあるのが静的平衡状態で安定している。これが冷温停止に当たる。福島原発は、動的平衡状態にある。
最大の問題は余震だ。大きな地震によりパイプが破断し40時間でメルトダウンに戻ると東電は言っているが、これでは安定状態とは言えない。冷却に使われているパイプは間に合わせのものだ。
第二の問題は、4号機。爆発と火災によりダメージを受け、また地震が来れば、燃料プールが損傷する危険がある。これは非常に憂慮すべき事です。
最後に、もう一つの問題は作業員の被曝。国際基準、日本の基準よりもはるかに高い。総ての作業員は、発ガンの可能性が劇的に上がる。賞賛すべき勇敢な人たちだが非常な危険に晒されている。
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2)住民の被曝
次は一般市民の被曝について。
事故直後1、2週間の被曝は測定していない。その被曝測定値も怪しいものだ。
測定値も外部被曝だけだ。ホット・パーティクルを吸い込むことを全く考慮していない。事故直後、大量の放射性ガスが放出された。
日本政府は、放出された放射性ガスは、1立方メートル当たり1300ベクレルm3 と発表。内部被曝が計算にはいっていない。ホットパーティクルの話を少しいたしましょう。
マルコ・カルトフェン氏が示した福島の車のエア・フィルタの写真を覚えていると思うが、彼は人間の肺も同様に汚れていると話している。これはホットパーティクルが、肺にダメージを与えている写真。
たった一つの微粒子だ。福島近辺の人たちはこれをたくさん吸い込んでいる。スティーブ・ウィング博士のデータは、スリーマイル・アイランドでは、事故後3-5年間で、肺がんが1割増えたことを示している。
日本政府はなんと安全基準を緩めてしまった。
20ミリシーベルト未満の被曝なので避難地域で安全に生活できると言っている。米国原子力施設作業員の平均被曝量は年間1.8ミリシーベルトで、彼らは給料をもらっている。
日本では、福島住民は10倍もの被曝をさせられて、しかも無給だ。—-
3)放射性ガレキ
3つめの話題は、放射性ガレキをどうするか。
福島原発は歴史上もっとも多い汚染水を海に垂れ流している。
では、福島県とその周辺の放射性ガレキの問題を考えよう。福島県だけでも、少なくともアメフト競技場のニューオーリンズ・スーパー・ドーム33杯分に相当する。(※東京ドームより大きなドーム型スタジアム)
この膨大な放射性がれきをどうするのか。例えば、12/14、東京郊外の学校で、芝生のシートに9万ベクレル/kgの汚染が見つかった。3、4月には広げてあったものだ。
解決法はこうです。環境庁は、なんと1キロの汚染シートを1トンのゴミと混ぜて焼却すれば、放射性セシウムは十分薄まると言っている。
日本の解決策は世界のどことも違う。米国なら300年間地下に埋めて管理する。
放射性物質は焼却炉の煙突から放出され、また灰にも残る。焼却灰は東京湾に投棄する計画である。
他国なら放射性廃棄物として管理されるべき焼却灰が、東京湾の埋め立てに使われる。これは実は合法だ。
グリーンピースが推進しているロンドン海洋投棄規制条約は、放射性廃棄物の海洋投棄を禁止している。これに違反はしないが、もちろんその意図には反する。
2012年に、グリーンピースなどが、日本各地の焼却炉から広がる汚染や、太平洋に流れ込む汚染水を調査することを私は望みます。
これらの放射性ゴミの投棄を、IAEAは大目に見ている。
最後の問題だが、誰が住民への被曝や放射性ゴミの投棄を監視しているのか?
東電はIAEAに監視下にある。IAEAは放射能の許容レベルを決定する。20ミリシーベルトという値はIAEAが容認している。
IAEAと契約した27カ国が、海洋汚染をモニターしている。
IAEAのトップは、天野之弥(あまのゆきや)氏、かつて日本で原子力を規制する立場にあった人物だ。IAEAの憲章第2条は次の通り。
「IAEAは、世界の平和と健康、繁栄のため、原子力による貢献を広げ加速することに努める」つまり、本来原子力を規制すべき人間が実は推進しているのだ。
IAEAは、国連の番犬組織だというが違う。
原子力を推進する国々により設立された組織であり、規制をしているわけではない。IAEAではなく我々市民がコントロールすべきだ。根本の問題がここにある。
汚染水は、海へ垂れ流し状態、東京湾へのガレキの投棄と、待ったなしの状況だ。
何とか、やめさせなければならない。日本政府は “取捨選択” をしたのです。
日本政府は、東京電力が”資本の実行性”のリスクにさらされたくない、として決断したのです。東電の金融リスクを危険にさらしたくないのです。日本政府の行った “取捨選択” は、東京電力を破産の危険にさらすよりも、国民を被ばくの危険にさらすということでした。
私は、これは正しい”取捨選択”だとは思いません。私は、日本国民だけでなく、世界中の人々が、インターネットを使い国際機関に、東京電力のためでなく、日本の人々のために正しい事をするよう働きかけることを願っています。
最後に、皆さんからのたくさんの寄付と、ビデオの書き起こしと、日本語翻訳のボランティアに、プログラマー、科学者、解析の為の生データを送ってくださった市民のみなさんに、感謝いたします。
この御協力が2011年の当サイトの成功に繋がりました。Happy New Year!