@動画 > 科学・技術 > 「隠しカメラ」は暴力・政治腐敗・虐待などの人権侵害に対して大きな銃よりもずっと強力でずっと効果的な武器だが、この力は賢く使う必要がある。/オレン・ヤコボヴィッチ

「隠しカメラ」は暴力・政治腐敗・虐待などの人権侵害に対して大きな銃よりもずっと強力でずっと効果的な武器だが、この力は賢く使う必要がある。/オレン・ヤコボヴィッチ

世界が目にすべき人権侵害の状況を暴露し、検証し、公開する組織 「Videre」を設立したオレン・ヤコボヴィッチ氏が、隠しカメラは銃よりもずっと強力で効果的だと語り、自身の活動経験から「学んだことが4つある」として、不正と戦うときの戦略を解説しています。

(所要時間:約15分)

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動画の内容 (全文書き起こし)
オレン・ヤコボヴィッチ: 隠しカメラが捉える世界で最も危険な場所における不正

アフリカのある村に住む メリーという女性の話から始めようと思います 彼女の最初の記憶は 与党により画策された暴動から家族で逃げているところです 別な政党に属するというだけの理由で 彼女の兄は民兵に殺害され 彼女自身 何度もレイプに遭いました

選挙1ヶ月前のある朝 メリーの村の人々はまた威嚇集会に招集されました この集会では男が人々の前に立って言うのです 「お前らが誰で 誰に投票したか 分かるからな もしちゃんと投票しなかったら 酷い目に遭わせるぞ」

しかしこの時のメリーは いつもとは違った気持ちでした この集会を心待ちにしていたのです 彼女は誰も気付かないような小さな隠しカメラを 服の中に忍ばせていました この集会の撮影は禁じられており 撮影しようとすれば命の危険がありました メリーは危険を承知していましたが このようなことをやめさせ 自分や村の人々を守るには この脅迫を白日の下にさらし 彼らを追求する者がいることを示して 彼らの安泰を打ち破る 必要がありました メリーは友人達とともに与党が行っている威嚇集会を 1ヶ月に渡って密かに撮影し続けました

[隠しカメラによる映像]

今度の選挙の話だ 我々の望むことを止めるものは何もない もし向こう側に付く者がいれば容赦はしない

[民兵による威嚇集会]

党はお前らをいつでも痛み付けられる 若い連中がお前らをぶちのめす

[政治集会の混乱]

もし党を支持すると言いながら嘘を付くなら 終わりだと思いなさい

[党青年民兵団]

反抗して死んだ奴もいるし 家を失った奴もいる 党に従わないなら 待っているのは悲惨な人生だ

この映像は世界中で放映されましたが さらに重要なのは 地元でも放映されたことです あの脅迫していた人々も見ることになりました 彼らは追求する者がいると分かって恐れました もはや安泰ではなくなったのです メリーと友人達は 与党勢力が選挙で暴力に訴えることができないようにし 何百という命を救いました メリーは人権蹂躙に対し カメラで対抗できるよう私たちの組織が支援した 何百という活動家の1人です

私の経歴は元々全然違った道をたどっていました イスラエルの保守派の家庭に生まれ 記憶している限り ずっと昔からイスラエル軍に入って国のために尽くし イスラエルの国土への権利を証明したいと考えていました 最初のインティファーダ (パレスチナの抵抗運動)があった直後に 私は軍に入りました

私が属していたのは 最も屈強でタフで攻撃的な歩兵部隊で 私は小隊の中で一番大きな銃を持っていました 私はほどなく士官になって部隊を率いるようになりました その後 ヨルダン川西岸に配属され このような光景を目にするようになりました 見たくない光景です しばらくは耐えていましたが 結局は西岸地区での勤務を拒否して営倉に入れられました

これは — (拍手)

見た目ほど悪くはありません ホテルのようなものでメシがまずいだけです (笑)

営倉で私は みんなに知らせなければと思い続けていました 西岸地区の現実がどのようなものか分からせなければならない 自分が見聞きしたことを みんなに伝えなければと 同時に私は 被害を被っているパレスチナの人々自身が自分で話を伝える必要も感じていました 外からやってきたジャーナリストや映像作家ではなく

私はベツェレムという イスラエルの人権団体に入りました 西岸地区を調べて 最も危険なところに住んでいる100家族を選びました 検問所やイスラエル軍基地の近くに住む人や イスラエル人入植者と隣り合わせの人々です 彼らにカメラを渡し使い方を教えました 入植者や兵士による暴力を撮した とても不快な映像がすぐに集まり始めました

このプロジェクトのビデオクリップを 2つお見せします どちらもイスラエルで放映され 大きな議論を呼びました あらかじめ 非常に暴力的な映像であることをお断りしておきます

最初の映像に出てくる マスクの男達はユダヤ人入植者です カメラを回す数分前 彼らは野良仕事していたパレスチナ人家族の所に来て この土地はユダヤ人入植者のものだから出て行けと言いました パレスチナ人は断りました すると何が起きたか見てみましょう

[隠しカメラによる映像]

近づいてくるマスクの男達はユダヤ人入植者です パレスチナ人家族に近づいていきます

[隠しカメラによる映像]

こちらは西岸地区のデモの光景です 緑の服の男はパレスチナ人です 彼はすぐに逮捕されることになります 目隠しされ手錠で繋がれています この後すぐ 彼はデモにやって来たことを後悔することになります 足をゴム弾で撃たれたのです 命に別状はありません

入植者や兵士が みなこのような振る舞いをする訳ではありません ほんの一部の人間がしていることですが 公正な裁きが必要です これらの映像のお陰で 軍や警察は捜査しないわけにいかなくなりました もちろんイスラエルでも放映され 一般大衆の目に触れることになりました このプロジェクトは占領地区における人権問題の見直しを迫ることになり 西岸地区における暴力を減らすことができました

このプロジェクトの 成功により 同じ方法を世界の別の場所でも使えないかと思い始めました 皆さん思うかもしれません 今日ではスマートフォンやインターネットのような技術のお陰で 世界の至る所で起きていることを見て知ることができる 誰もが発信できるようになったと

しかしそれは一部でのことです 今日においても インターネットにアクセスできるのは 世界人口の半分以下で 世界で30億の人々が — もう一度言いますが 世界で30億の人々が 権力者によって検閲されたニュースしか見ることができないのです

ちょうどその頃 私は ウーリ・フルッツマンという素晴らしい人物から連絡を受けました 彼は映像作家であり 活動家です 私たちは似たような思いを抱いているのが分かり 一緒にVidereという組織を立ち上げることにしました ロンドンでこの組織を立ち上げている間にも 大規模な暴力や 虐待に遭いながら それが伝えられていない地域を密かに訪れていました そしてどうすれば助けられだろうかと考えていました

学んだことが 4つあります 第1に僻地のコミュニティに 接する必要があること 暴力が公の目の届かないところで行われています 彼らと協力して 何が伝えられていないか理解して 彼らがそれを記録する手助けをする必要があります

学んだ2番目のことは 彼らが安全に撮影できるようにする必要があるということです 安全を最優先する必要があります 私がかつて働いていた西岸地区では カメラを出したからといって撃たれることはないでしょうが 私たちが活動したい地域では携帯を取り出しただけで文字通り殺されかねません それが必要とあらば 活動を内密にし 隠しカメラを使う理由です

あいにく私たちが現在使っている隠しカメラは 当然 お見せできませんが こちらは昔使っていた隠しカメラです 店で買うことのできるものです 今では専用の隠しカメラを自分たちで作っています

メリーが与党の 威嚇集会を 撮影するとき 服の中に忍ばせていたカメラもそうです 環境にすっかり溶け込んで誰も気がつきません 安全の確保は隠しカメラの使用に留まりません 活動家がカメラをオンにするずっと以前から安全対策は始まっています 協力者を守るため あらゆる場所や撮影のリスクをあらかじめ検討し 何かがまずくなった時の代替案を用意します そして作戦の開始前に準備に抜かりがないことを確認します

学んだ3番目のことは 検証の重要さです 残虐行為の見事な映像を手にできたとしても それが検証できないとしたら価値はありません 最近 シリアやガザ地区の映像と称しながら 別な紛争で撮られたものがありました そのような誤報は情報源の信頼性を損ない 他の信頼できる情報源の信用まで損なうことになります 私たちは情報が確かで信頼できることを確認するためにあらゆる手を使っています 協力者自身について どんな人物か調べることから始め 彼らと密に調整をします どのように撮影をするか 道路標識や腕時計や新聞を撮してもらいます 地図で確認し 情報を二重にチェックし 画像のメタデータも調べます

学んだ4番目のことで 最も重要なことは 良い変化を引き起こすために映像をいかに使うかということです 効果を上げるために重要なのは 得られた映像をいかに使うかということです

密かな撮影を行う何百という活動家と 私たちは協力しています 現地の状況はどういうものか それを伝えるために どのような映像が欠けているか その状況に影響力を持っているのは誰か 状況改善のために映像をいつ公開すべきか知るために 彼らと連携しています

人々の関心を集めるため 地元メディアで流すということもあります 法を改正するために政治家と協力することもあります 裁判での証拠として使うため法律家と協力することもあります しかし社会的な変化を生み出すために最も効果的なのは コミュニティの中で活動することです

1つ例をお見せしたいと思います ファティマはケニアで権利侵害と戦う女性ネットワークの一員です 彼女のコミュニティでは学校や仕事に行く途中などに 女性が絶えずハラスメントを受けています 彼女たちはコミュニティを内側から変えようと試みています お見せするビデオで ファティマは仕事に行く時の様子を見せてくれます 彼女が隠しカメラで 撮った映像に彼女自身による解説音声をかぶせてあります

[隠しカメラによる映像]

私はファティマ・チウスィーク 32歳 母親 ジワ・ラ・ンゴームベに住んでいます 毎朝 11番のミニバスに乗ります でも平穏に仕事に行けるわけではなく 毎日が恐怖で始まります 私と一緒に来て 私の目を通して 私がどう感じているかを感じてください 歩きながら私は思っています 「また触られるんだろうか? 掴まれるんだろうか? 添乗員に蹂躙されるんだろうか?」 車内の男達も 私を嫌らしい目で見 体に触り 体を擦りつけ 私を掴みます 座席に座ったら その日のことや 夢や 学校にいる子供のことだけ考えたいと思いますが バスが着いた時にされることへの不安でいっぱいになります

今日 人権を巡る戦いには新たな前線があります かつての私の武器は大きな銃でしたが 今の武器はこれです これはずっと強力で ずっと効果的な武器なんです しかしこの力は賢く使う必要があります

適切な映像を 適切な時に 適切な手に渡すことで 本当の変化を引き起こせるのです

ありがとうございました

(拍手)

ありがとうございます

(拍手)

引用元:TED

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