2014年1月23日 政治・ニュース タグ: 原発問題, 東京都知事選挙, 細川護熙(ほそかわもりひろ)
【東京都知事選】 細川護熙(もりひろ)氏、「原発問題こそ最重要テーマ、原発ゼロに向けて全てをかけて戦う」
2014年1月22日に行われた、細川護熙(ほそかわもりひろ)氏の東京都知事選・出馬会見を紹介します。
(所要時間:約17分)
動画の内容 (全内容の文字起こし)
私は政治の世界を退いてからこの15年あまり、焼き物をやったり絵を描いたり、創作活動をする一方で、震災後はがれきのマウンドに木を植えていく「いのちの森のプロジェクト」という活動をやってきました。その一方で脱原発の声を挙げ続けてまいりました。
半分隠居暮らしをしていたものですから、都知事選に出るなどということはついこの数日前まで思ってもみませんでした。ところが各界の敬愛する方々から「ぜひ最後のご奉公をあなたがやるべきだ」と背中を押されて、日増しに真剣に考えるようになりました。特に脱原発の同志である小泉元総理から強いメッセージを受けて意を決して出馬の意向を固めた次第です。
21年前、日本新党を一人で立ち上げたときには、小舟の舳先に旗を立てて、この指止まれということで船出をしたのですが、今回は本当に躊躇しながら迷いながら孤独に苦渋の決断をさせていただきました。しかし決めた以上は後戻りできません。力を尽くして、東京をさらにいい方向へ進めていかなければならないし、また、国のありようにも東京から注文をつけることがあればいろいろもの申していきたいと思っております。
なぜ決意をしたかということですが、今の国の目指している方向、進め方に何かと危うい者を感じているからです。憲法でも安全保障でもあるいは近隣諸国との関係でも、懸念していることがいくつかあります。
デフレ脱却について、安倍さんはがんばっておられますが、現在の1億3千万人の人口が50年後には9千万人、100年後には江戸時代に近い3分の1の4千万人くらいにまで減ると予測される、これからの時代に、今までのような大量生産、大量消費の、経済成長至上主義ではやっていけないのではないか。
腹いっぱいではなく、腹七分目の豊かさでよしとする抑制的なアプローチ、心豊かな幸せを感じ取れる、そういう社会を目指して、成熟社会へのパラダイム転換を図っていくことが求められているのだと思います。
これは世界でもおそらく初めての歴史的実験になるかも知れませんが、世界が生き延びていくためには豊かな国がその生活のスタイルを多消費型から共存型へと変えていくしかありません。成長がすべてを解決するという傲慢な資本主義から幸せは生まれないということを我々はもっと謙虚に学ぶべきだと思います。
今のことと関連しますが、私が特に心配しているのは、成長のためには原発が不可欠だと言って政府がそれを再稼働させようとしていることです。そのことに私は改めて強い危機感を持ち、それが今回出馬を決意するきっかけともなりました。
原発のリスクの深刻さは福島やチェルノブイリを見るまでもなく、ひとたび事故が起こったら国の存亡に関わる大事故になる可能性をはらんでいます。そのためには現在の原発依存型のエネルギー多消費型社会を180度方向転換しなければだめだということです。
なぜ私がそういう危機感をもつに至ったかということは、3.11がもちろん決定的なきっかけになりました。
かつて私が不覚にも信じ込んでいた、原発がクリーンで安全だという神話はもはや完全に崩壊しました。福島の4号機は大きな地震が来ても大丈夫なのか、汚染水の垂れ流しは本当に止まっているのか、核のゴミは捨てる場所さえ見つからない。捨て場もないのに原発再稼働させるようなことは、あとの世代に対するまさに犯罪的な行為だと思います。
原発がなければ日本の経済が成り立たないという人がいますが、もう2年間原発は止まったままではありませんか。もちろんそのために火力発電の燃料費など相当なコストを海外に払っているわけですが、一方で今まで原発事業の無責任態勢によって現実には実は天文学的なコストがかかっているわけです。
しかし、それが税金などで国民の負担にされて、原子力による発電のコストは安いというごまかしとウソがまかり通ってきました。原発の安全性の問題や、核のゴミのことを考えたら、原発がいかに割に合わないものであるかということは明白です。
そういう原発に依存するよりも、同じコストをかけるなら自然エネルギーなどに替えていく方がよほど生産的だと思いますし、新しい雇用や技術を開発していく可能性もそこから開けてくると思います。世界の自然エネルギー産業の成長を日本に取り込んで、成長の切り札にしていく絶好の機会であります。
今ここで原発ゼロの方向を明確に打ち出さなければ、50年100年たっても原発依存の状態から抜け出すことは、まず不可能でしょう。私もそういう意味で再稼働にストップをかけ、自然エネルギー大国日本を世界に発信していく方向に今決断すべきときだと確信しております。
この都知事選挙は小泉さんが言ったように、原発がなくても日本は発展していけると考える人々と、原発がなければ日本は発展できないと考える人々とのまさに戦いです。私は原発がなくても発展していけると信じている人々とともに、その先頭に立って戦う決意です。
原発問題は都知事選の争点にふさわしくないという人がおりますが、都知事の第一の任務は都民の生命と財産を守ることです。東京から100キロ200キロぐらいのところにある浜岡とか、東海第二とか、柏崎刈羽などでも、もし事故が起こったら、都民の生活、安全、財産というものは壊滅的な被害を受ける。オリンピックや消費税、TPPどころではないんです。すべてのものが吹き飛んでしまうわけですから、
原発問題こそ、今度の選挙の最大の争点、東京の最重要テーマであることは疑う余地がありません。
さて東京は2020年のオリンピック、パラリンピックの開都市に決定しました。私は当初、大震災後、仮設住宅などにまだ30万人近くの人たちがおられることを思いますと、原発事故後の復旧、復興にまだめどがつかない状態下で、オリンピック、パラリンピック招致に諸手をあげて賛成する気持ちになれませんでした。しかし開催が決まったからには、2020年を新しい東京、新しい日本の建設にとって絶好の目標年にできると思い直して、むしろこのオリンピック、パラリンピック開催を歓迎し、これを新しい日本をつくるチャンスとしてとらえるべきだとの気持ちに変わりました。
ちょうど20年前、私は総理就任後最初の所信表明演説で、質の高い実のある国家、質実国家をめざすということを政権の旗印として掲げました。大量生産、大量消費、大量廃棄の経済や生活を転換する必要を痛感していたからです。大震災、原発事故を経てこのような方向は今こそ決定的になったと感じています。オリンピック、パラリンピック開催を大きな目標に日本の経済や生活を変えていく。首都である東京はその先頭を走ってそのお手本になりたいと思います。
脱原発社会は我々に地産地消の自然エネルギーの普及とともに、経済活動や日常生活での電力消費の無駄の節減を要請しています。私は原発に頼らない東京を実現するために、公的部門、民間部門での自然エネルギーによる発電を促し、一方で電力消費の節減に向かって都民の協力を求め、さらに省エネのための技術開発を促進していきたいと思います。
災いを転じて福となすという言葉がありますが、大震災、原発事故は日本を変え、東京を変えるまたとない機会にしなければ成りません。東京オリンピック、パラリンピックでは、オリンピックの3大ムーブメントすなわち、競技、文化、環境の分野におきまして、さまざまな形で東北の皆さんに協力して頂き、その実質は東京・東北オリンピック、パラリンピックのようにできないものかとも考えております。
私の世代は結果的に原発を推進、容認してきました。その世代の責任を感じるとともに、国の最高責任者としての責任が私にはあります。それは小泉さんも同じです。その不明の責任を感じ、何としても我々世代の最後の仕事として、新しい経済、新しい生活の展望を開いていきたいと思います。
いずれにしても、原発ゼロの具体的な取り組みについては東京エネルギー戦略会議というものを立ち上げ、脱原発のエネルギー基本計画を立てていきたいと思います。
私は首都東京の景観にも強い関心を持っております。防災上の観点からも情緒あふれる水と緑の回廊を実現したいと思いますし、日本橋の上の首都高速を排除したり、あるいは可能な路面電車の復活も考えてみたいと思っています。
今、世界は文明史の折り返し点に立っています。環境や資源の有限性の壁に直面して、経済や生活の転換が迫られているのです。福島原発事故は転換に着手しない我々への緊急警報ではなかったでしょうか。
東京には誰が知事に選ばれても取り組まなければならない重要で緊急を要する共通の課題があります。
大地震にそなえた帰宅困難者対策、耐震化の問題、密集した木造住宅の不燃化などの防災対策、高齢者、障害者に対する福祉、あるいは子育て支援、幼児教育充実などです。これらについては都議会や都庁職員の皆さんが知恵を絞って取り組んでこられました。これらの施策のうち継承すべきものは継承して発展的に受け継ぎ、確かな成果を上げていきたいと考えております。
一方、今まで国でも都でもできなかったこともたくさんあります。
とりわけ岩盤規制と言われる、各種の既得権によって阻まれてきた医療、介護、子育て、教育などの分野での規制改革を強力に推し進めていきたいと思います。これは既存の政党勢力と結びついた人たちにはおそらく難しい課題でしょう。私は何のしがらみもありません。恐れるものもありません。既得権との戦いこそ私に最も期待されるところではないかと思います。
私は思案の上、私のすべてを東京の新しい方向付けに捧げる決意をいたしました。それはまた日本の新しい方向となるはずです。
また今回の決意の背景には、20年前の政権担当で、必ずしも皆さんのご期待に添う政治の実現に取り組めなかったという深い反省もあります。また借入金問題については、10年かけて全部お返ししたということを国会で誠意をもってご説明させていただきました。しかし残念ながら野党の方々にご理解を頂けずに、国会が空転することとなり、国民生活に関わる予算の成立を遅らせるわけにはいかず、総理をやめるということでけじめをつけさせていただきました。私の不徳のために多くの皆さんの失望を招いたことは、この20年間、私の脳裏を1日として離れることはありませんでした。
この点については改めてこの機会にお詫びを申し上げます。
このところ晩節を汚すなと多くの人たちから忠告を頂きました。確かに逃げる方が楽であることは間違い有りません。しかし日本の存亡に関わるときであり、志を同じくする方が立候補しない以上、私が一身の毀誉褒貶(きよほうへん)を顧みるときではないと考え、あえて多くの人の要請に応え、出馬の決意を固めた次第です。
東京が世界の多くの首都に先駆けて文明史的な転換をなしとげ、新しい経済と生活の新しい形態について明るい展望を開く機会を迎えていると私は確信しております。
立つ以上は最善を尽くします。誇りを持って名誉をなげうつことを潔しとする、私はこの歴史的戦いにすべてをかけて戦おうと腹を決めました。皆様の深いご理解を賜りますようにお願いをいたしまして、決意表明とさせていただきます。
ありがとうございました。
引用元:basilの日記




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