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現行憲法で「集団的自衛権が行使できる」と言う議論は、ネス湖でネッシーを探すくらい無理がある/憲法学者・木村草太氏の解説部分・全文書き起こし

2015年3月13日に放送された、報道ステーション「新 安保法制で できること」を紹介します。

(所要時間:約15分)

※ 残念ながら動画が見れない状態になりましたので、〔全内容書き起こし〕を紹介しておきます。 (放送された内容すべてをテキストでご覧いただけます)

動画の内容(木村草太氏の解説部分・全文書き起こし)
木村草太氏の解説

木村草太氏:

あの~ 現行憲法でそれ(集団的自衛権の行使)が出来るという議論は、これは おそらく あの~ 「ネッシーを探すぐらい無理がある議論」だと思っています。

国が集団的自衛権を行使するには、まぁ何が必要かというと、そのための権限を認めた「憲法の条文」を探してくる必要があります。で、あの~ 政府の権限っていうのは、「憲法73条」っていうところに主に列挙されているんですけれども、ここには、その 国外の防衛のための、まぁ 防衛行政のための規定はあるんですけれども、集団的自衛権を行使するための「軍事権の規定」が無いわけですね。

ですから、この状況で「根拠を探せ」というふうに言われても、それはまさに「ネス湖でネッシーを探せ」と言われているのと同じ状況なんですね…。

古館キャスター:

だけど、あの、政府の見解としては、当然、このところは今までと違って「ネス湖にネッシーはいる」と言ってるわけですよね?

木村草太氏:

はい。しかしですね、あの~ 政府は「どの権限なのか?」という事を具体的に説明していません。憲法が与えていない権限を、政府が勝手に行使しようとすると、果たして「誰が」「どの範囲で」「どのような手続きにおいて」それをやるのか?という事を憲法でコントロールできないわけですね。

ですから、もし本当に必要だとしても それは 憲法に、そのために手続きや権限を書き込む必要がある。それをすっとばしてやろうという事は、これは今言ったように憲法上のコントロールが効かなくなるという点で非常に危険だという事です。

古館キャスター:

もし改正するならば、「憲法の改正をする」という正規の手続きでやはり行くべきであるという事ですか?

木村草太氏:

もちろんそうです。あの~、どういう範囲で軍事権を行使するかというのは、政府や国会の一存で決めるべき事ではなくて、「国民全体で議論をして国民投票で決めること」だというふうに日本国憲法は考えていますし、まぁ常識で考えても、これまでやってこなかった軍事権を行使するという事であれば、その条件や手続きについて、まぁ当然「国民全体で議論をし国民投票で決めよう」という事になるはずですね。

古館キャスター:

これ あの 簡単に言える話ではないのかもしれませんが、先生どうなんでしょう。あの~、憲法に関しては、え~ 木村先生の師匠にあたる先生がおっしゃってるようですけど、「常に憲法っていうのは完成することなく、世代を受け継いでいく巨大なプロジェクトだ」と。私この文章に接したとき サグラダファミリアみたいだなって思ったんですね。

ですから、憲法改正っていうのは、正規手続きなら視野に入れても良いというお考えはお有りなんですか?

木村草太氏:

ええ もちろん そうなんですけれども、その言葉のニュアンスは他にも色々あって、「今ある憲法というのの意味を我々が理解し、それを まぁ 生かすために そこで規定された理念を実現するために、何が出来るかを考える」というのは、それは憲法を作った時だけではなくて、常に我々が、我々の世代として、考えていかなくてはいけない事なわけですね。

ですから その~ 「憲法を改正する」という事だけではなくて、「今ある憲法の意味を考え続ける」え~ そういう事をして欲しいという事で、“未完の憲法”という言葉があるというふうに私は理解しています。

古館キャスター:

ああ~、そうですか。大変わかりやすく説明してくださいました。それからもうひとつ聞きたいのは、他国軍を後方支援するための「恒久法」。特措法とかじゃなくて恒久法をガチっと作るという方向の議論があるわけですが、憲法では その 後方支援のあたりはどうなのかな?って、私も混乱しちゃうとこなんです。

木村草太氏:

はい。今ある議論をみていると、これは「やりたい」という意思の表明ばっかりで、憲法についての政府・与党からの説明が不足しているという印象は否めません。

えー、憲法論っていうのは、確かに面倒ですし、専門的でちょっと敬遠してしまうところもあると思うんですけど、まぁ憲法っていうのは過去の失敗例をもとに作られた、まぁ「旅行準備の前のチェックリスト」みたいなもので、そのリストをちゃんとチェックしないと、まぁ当然、忘れ物をしちゃう、まぁ あの「失敗をしてしまう」という事になるし、まぁ「国民の納得も得られない」という事になります。

で、そういう視点で後方支援や治安維持活動においての憲法論をみてみると、まぁ これは これ自体が武力行使ではないので、だから「即座に9条違反になる」という事ではないんですけれども、憲法はやっぱり、それをやる場合には、「きちんとした検証」、あるいは、「その責任追及の仕組みを作ることを求めている」というふうに考えざるを得ない、と思っています。

古館キャスター:

はい。ていうと、やっぱり具体的に何か作っていかなきゃダメですねぇ? 検証する、監視する。

木村草太氏:

そうですね。今、議論しているのは、送る前に 国会の事前承認が必要なのか?、内閣の判断限りで出来るのか?という事です。ただ、それだけではなくて、その やった後に「どうだったのかという事を検証して責任を追求する」、あるいは責任が まぁ 無ければ無いでいいんですけれども、「責任を明らかにする」ことが必要です。

具体的に言えば、例えば、国会内に委員会を作ってみたりとか、あるいは派遣の時の公文書の管理を徹底し、それを事後的にでも情報公開をすると。で、それによって国民も議論をするし、国会議員も監視をする。そこで、その派遣がそもそも良い影響をもたらしたのか? 装備は適切だったのか? あるいは、危険の認識をちゃんとしていたのか? 被害はどれぐらいで、現地の人にどういう評価を得たのか? ということを、事後に厳しくチェックしていく。

こういう仕組みを設けることが必要で、また、こういう仕組みのもとで、責任があったかどうかという事が判断されるようになれば、より慎重で適切な派遣が、もしやるにしても、行われるようになると思います。

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